●ホルモン性皮膚炎(内分泌性の皮膚炎)
分泌の異常を起こしたホルモンの種類により、脱毛する場所は異なります。例えば、副腎皮質ホルモンの分泌量が増えるか、成長ホルモンの分泌量が少なくなったときには、ふつう胴体から広く脱毛しますが、頭部や四肢の被毛は残ります。
性ホルモンの分泌量が多すぎたり少なすぎたりする場合には、生殖器や肛門周辺に脱毛が集中することがあります。
甲状腺ホルモンの量が減ると、犬種によっては胴体が左右対称に脱毛することがあります。これは犬でもっとも多いホルモンの異常です。
このような脱毛の特徴を知ることは、皮膚病を診断するうえで極めて重要です。
ホルモンは内蔵の働きにも関係しているため、ホルモン異常による皮膚病にその他の症状が伴うことがあります。例えば副腎皮質ホルモンの分泌量が増えると、大量に水を飲み、尿の量が増え、たくさん食べるようになります。また甲状腺ホルモンの分泌量が少なくなると動作が不活発になって、寒さや暑さに弱くなったり太ったりします。
性ホルモンの異常では、発情の周期が狂う、発情期が延びる、もしくはすぐに終わる、繁殖力が低くなるなどの症状が見られます。こういった全身の症状の観察も、ホルモンの異常を判断するためには大事なことです。
ホルモンの分泌量が多すぎたり、少なすぎたりして皮膚病になります。
皮膚に影響を与えるホルモンの異常には、副腎皮質ホルモンの分泌量が増える、甲状腺ホルモンの量が減る、性ホルモンの量が多すぎるか少なすぎる、成長ホルモンの量が減るなどの変化があります。
被毛はその根元にある毛包の働きで伸びます。毛包は周期的に活動と休止を繰り返しますが、ホルモン性の皮膚病では毛包が休んだままになるので、抜け毛が増えます。
ホルモン薬などの薬を投与します。腫瘍などによってホルモン分泌量が増えているときは、腫瘍を切除することもあります。
薬物療法では副作用が起こるおそれもあるので、十分な診断を行ったうえで、必要な薬物を投与します。治療効果が現れるまでには、数カ月以上かかることも少なくありません。健康診断を定期的に行いながら、治療を続けます。
●甲状腺ホルモンの異常
おもな症状は脱毛です。ゴールデン・レトリバーなどの比較的大きな犬では、胴体が左右対称に脱毛することがありますが、すべての例で見られるわけではありません。脱毛した部分にかゆみはありませんが、しばしば色素が集まって皮膚が黒ずみます。
皮膚の病変の他、元気がない、動作がにぶい、寒さや暑さに弱くなる、肥満になる、繁殖力が低くなる、食欲が異常に高まるなどの症状が見られます。
甲状腺ホルモンの分泌量が十分でないために起こる病気で、中型犬以上の犬でしばしば発症します。
ホルモンの分泌量が少なくなる主な原因は、甲状腺が先天的に萎縮している、または何らかの病気によって退縮したためではないかと考えられています。薬物の投与や麻酔、あるいはストレスによって甲状腺ホルモンの分泌量が減ることもあります。
一般に、長期にわたる甲状腺ホルモン薬の投与が必要になります。適正な量を与えれば、副作用が現れることはほとんどありません。
しかし、脱毛した場所に再び毛が生えそろうまでには、普通数カ月かかります。飼い主はすぐに良くならなくても焦らず、犬の状態を見守るようにしましょう。